2012年5月13日日曜日

片頭痛(国際頭痛分類から)


  • 片頭痛について、主要なものを、国際頭痛分類第2版に従って紹介・解説いたします。
  • ここに示す解説は、原文を損なわない範囲で簡略に記載していることをお断りしておきます。
  • 原文は日本頭痛学会のHPで閲覧可能です ので詳しくはそちらを参照してください。


● 1. 片頭痛(Migraine)の分類

  • 国際頭痛分類第2版では片頭痛は下記のサブタイプ、サブフォームに分類されております。
  • 1.1 前兆のない片頭痛(Migraine without aura)
  • 1.2 前兆のある片頭痛(Migraine with aura)
    • 1.2.1 典型的前兆に片頭痛を伴うもの(Typical aura with migraine headache)
    • 1.2.2 典型的前兆に非片頭痛様の頭痛を伴うもの(Typical aura with non-migraine headache)
    • 1.2.3 典型的前兆のみで頭痛を伴わないもの(Typical aura without headache)
    • 1.2.4 家族性片麻痺性片頭痛(Familial hemiplegic migraine)
    • 1.2.5 孤発性片麻痺性片頭痛(Sporadic hemiplegic migraine)
    • 1.2.6 脳底型片頭痛(Basilar-type migraine)
  • 1.3 小児周期性症候群(片頭痛に移行することが多いもの)(Childhood periodic syndromes that are commonly precursors of migraine)
    • 1.3.1 周期性嘔吐症(Cyclical vomiting)
    • 1.3.2 腹部片頭痛(Abdominal migraine)
    • 1.3.3 小児良性発作性めまい(Benign paroxysmal vertigo of childhood)
  • 1.4 網膜片頭痛(Retinal migraine)
  • 1.5 片頭痛の合併症(Complications of migraine)
    • 1.5.1 慢性片頭痛(Chronic migraine)
    • 1.5.2 片頭痛発作重積(Status migrainosus)
    • 1.5.3 遷延性前兆で脳梗塞を伴わないもの(Persistent aura without infarction)
    • 1.5.4 片頭痛性脳梗塞(Migrainous infarction)
    • 1.5.5 片頭痛により誘発される痙攀(Migraine-triggered seizure)
  • 1.6 片頭痛の疑い(Probable migraine)
    • 1.6.1 前兆のない片頭痛の疑い(Probable migraine without aura)
    • 1.6.2 前兆のある片頭痛の疑い(Probable migraine with aura)
    • 1.6.5 慢性片頭痛の疑い(Probable chronic migraine)
  • その他の疾患から2次的に起った片頭痛様頭痛(症候性片頭痛)は、その疾患に応じてコード化する。
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● 全般的コメント

  • 一次性頭痛か、二次性頭痛か、あるいはその両方か?
  • 他疾患と時期的に一致して片頭痛様の頭痛が初発する場合には、原因疾患としてコード化する。
  • 以前から存在する片頭痛が、他疾患と時期的に一致して悪化する場合には、2通りの可能性がる。
    • 片頭痛の診断のみとする
    • 片頭痛 + 他の疾患と診断
  • 二次性頭痛の診断を追加する際の裏づけになる要素
    • 原因疾患と頭痛とが時期的によく一致している
    • 既存の片頭痛の著しい悪化がある
    • 原因疾患が片頭痛を惹起するか悪化させたという確実な証拠がある
    • 最終的に原因疾患軽快後の片頭痛の改善または消失する
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● 緒言

  • 片頭痛は、日常生活に支障をきたす一次性頭痛の1つで頻度が高い。
  • 片頭痛は有病率が高く、社会経済および個人への影響が強い。
  • 世界保健機関(WHO)により日常生活に支障をきたす疾患中、第19位である。
  • 片頭痛は、2つの主要なサブタイプに分類できる。
    • 1.1「前兆のない片頭痛」は、特異的な症状と随伴症状により特徴づけられる。
    • 1.2「前兆のある片頭痛」は、頭痛に先行・随伴する局在神経症状によって特徴づけられる。
  • 頭痛発作前に数時間〜数日の予兆期(premonitory phase)や頭痛回復期(resolution phase)がある こともある。
  • 予兆期および回復期の症状
    • 活動性の亢進、活動性の低下
    • 抑うつ気分
    • 特定の食物への過剰な欲求
    • 反復性のあくび
    • その他の非典型的な症状
  • ふたつ以上の片頭痛サブタイプの診断基準を満たしている場合には、すべてのサブタイプをコード化する。
    例:   1.2「前兆のある片頭痛」 + 1.1「前兆のない片頭痛」
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● 1.1「前兆のない片頭痛」

  • 解説:
    • 頭痛発作を繰り返す疾患で、発作は4〜72時間持続する。
    • 片側性、拍動性の頭痛で、中等度〜重度の強さであり、日常的な動作により頭痛が増悪することが特徴的であり、
    • 随伴症状として悪心や光過敏・音過敏を伴う。
  • 診断基準:
    • A. B-Dを満たす頭痛発作が5回以上ある(注1)。
    • B. 頭痛の持続時間は4〜72時間(未治療もしくは治療が無効の場合)(注2;3;4)
    • C. 頭痛は以下の特徴の少なくとも2項目を満たす
      • 1.片側性 (注5;6)
      • 2.拍動性 (注7)
      • 3.中等度〜重度の頭痛
      • 4.日常的な動作(歩行や階段昇降などの)により頭痛が増悪する、あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける
    • D. 頭痛発作中に少なくとも以下の1項目を満たす
      • 1.悪心 または 嘔吐(あるいはその両方)
      • 2.光過敏 および 音過敏 (注8)
    • E. その他の疾患によらない(注9)
  • 注:
    • 1. 発作回数が5回未満の例は、1.6.
      反芻と抑うつ
      1「前兆のない片頭痛の疑い」にコード化する。
    • 2. 片頭痛発作中に入眠し、覚醒時には頭痛がない場合の発作の持続時間:  目覚めた時刻までとみなす。
    • 3. 小児では発作の持続時間は、1〜72時間とする。
    • 4. 発作が3ヵ月を超えて15日/月以上の場合には、1.1「前兆のない片頭痛」 + 1.5.1「慢性片頭痛」とする。
    • 5. 幼児の片頭痛は両側性である場合が多い。
    • 6. 片頭痛は通常、前頭側頭部に発生する。小児における後頭部痛は器質性疾患を疑う。
    • 7. 拍動性頭痛とは心臓の拍動に伴い痛みが変化することをいう。
    • 8. 幼児の光・音過敏は、行動から推測する。
    • 9. 用語集参照
  • コメント(要約):
    • 1.1「前兆のない片頭痛」は、最も一般的な片頭痛サブタイプである。
    • 1.2「前兆のある片頭痛」に比して発作発現頻度が高く、日常生活に支障をきたす傾向が強い。
    • 前兆のない片頭痛は、しばしば月経と密接な関係にある。
      • 付録にA1.1.1「純粋月経時片頭痛」およびA1.1.2「月経関連片頭痛」の基準を示す。
    • 発作頻度の極めて高い片頭痛を1.5.1「慢性片頭痛」と分類する。
    • 前兆のない片頭痛は、薬物乱用により重症化する。この場合には8.2「薬物乱用頭痛」にコード化する。
    • 前兆のない片頭痛発作には皮質拡延性抑制は関与していない。
    • 一酸化窒素(NO)およびカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の関与は明らかである。
    • 片頭痛は単に血管性の疾患ではなく、中枢神経に由来する血管周囲神経終末の感作(sensitization)と考えられている。
    • 片頭痛の治療および研究に対するトリプタンの貢献は大きい。
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● 1.2 前兆のある片頭痛

  • 他疾患にコード化する:13.17「眼筋麻痺性'片頭痛'」(Ophthalmoplegic 'migraine')
  • 解説:
    • 通常5〜20分にわたり進展し、持続時間が60分未満の可逆性局在神経症状からなる発作を繰り返す。
    • 前兆のない片頭痛の特徴を有する頭痛が前兆後に生じることが多い。
    • 稀に片頭痛の特徴を欠く頭痛であったり、全く頭痛がなかったりする例がある。
  • 診断基準:
    • A. Bを満たす頭痛が2回以上ある
    • B. 片頭痛の前兆がサブフォーム1.2.1-1.2.6 のいずれかの診断基準項目BおよびCを満たす
    • C. その他の疾患によらない (注1)
  • コメント:
    • 前兆とは、神経症状の複合体であり、片頭痛発作の直前または同時に起こる。
    • 前兆のある片頭痛発作患者の多くは前兆のない片頭痛発作もみられる(1.2「前兆のある片頭痛」および1.1「前兆のない片頭痛」としてコード化する)。
    • 予兆は、片頭痛発作の数時間〜1日または2日前から生じる。
      • 疲労感、集中困難、頸部のこり、光・音過敏、悪心、霧視、あくび、顔面蒼白などの組み合わせからなる。
      • 「前駆症状(prodrome)」および「警告症状(warning symptoms)」という用語はしばしば「前兆」の意味を含む用語として誤用されるため、避けるべきである。
    • 片頭痛前兆の大部分は、1.1「前兆のない片頭痛」の基準を満たす頭痛を伴う。⇒1.2.1「典型的前兆に片頭痛を伴うもの」という疾患単位を区別した。
      • 片頭痛前兆は1.1「前兆のない片頭痛」の基準を満たさない頭痛を伴うこともあり、また、片頭痛前兆のみで頭痛を伴わない場合もある。
        この2つのサブフォームも区別した。
    • 前兆症状の発現前または発現時には、大脳皮質の局所脳血流量減少が認められる。
    • 脳血流量減少は後頭部から始まり、前方へ波及する。通常は脳虚血に陥る閾値を下回らない。
    • これらの領域では、1〜数時間後より徐々に充血へ移行してゆく。
    • Lea‾oの皮質拡延性抑制が示唆されている。
    • 上下肢の症状を有する患者では、ほぼ常に視覚性前兆症状も経験している。
    • 運動麻痺(脱力)を呈する患者は別に分類する。⇒片麻痺性片頭痛
    • 「前兆遷延型片頭痛」および「突発性前兆を伴う片頭痛」という症候群は廃止した。
  • 1.2.1 典型的前兆に片頭痛を伴うもの
    • 解説:
      • 典型的前兆には視覚症状、感覚症状、言語症状がある。
      • 徐々に進展し、1時間以上持続することはない。
      • 前兆には陽性徴候および陰性徴候が混在し、完全に可逆性である。
      • 1.1「前兆のない片頭痛」の基準を満たす頭痛を伴う。
    • 診断基準:
      • A. B-Dを満たす頭痛発作が2回以上ある
      • B. 少なくとも以下の1項目を満たす前兆があるが、運動麻痺(脱力)は伴わない
        • 1. 陽性徴候(例えばきらきらした光・点・線)および・または 陰性徴候(視覚消失)を含む完全可逆性の視覚症状
        • 2. 陽性徴候(チクチク感)および・または 陰性徴候(感覚鈍麻)を含む完全可逆性の感覚症状
        • 3.完全可逆性の失語性言語障害
      • C. 少なくとも以下の2項目を満たす
        • 1. 同名性の視覚症状(注1) または 片側性の感覚症状(あるいはその両方)
        • 2. 少なくとも1つの前兆は5分以上かけて徐々に進展するか および・または 異なる複数の前兆が引き続き5分以上かけて進展する
        • 3.
          "痛みはスケールをcatastrophizing "
          それぞれの前兆の持続時間は5分以上60分以内
      • D. 1.1「前兆のない片頭痛」の診断基準B-Dを満たす頭痛が、前兆の出現中もしくは前兆後60分以内に生じる
      • E. その他の疾患によらない (注2)
      • 1. 中心視野に視覚消失または霧視が追加的に起こる場合がある。
      • 2. (注2)
    • コメント:
      • 「典型的前兆に片頭痛を伴うもの」は、前兆のある片頭痛症候群のうち最も一般的なものである。
      • 稀に二次性類似疾患(頸動脈解離、動静脈奇形、痙攣など)により類似の症候が起りうる。
      • 視覚性前兆は最も一般的なタイプの前兆で、閃輝暗点(fortification spectrum)として現れる場合が多い。
        • 固視点付近にジグザグ形が現れ、右または左方向に徐々に拡大し、角張った閃光で縁取られた側部凸形を呈し、
          その結果、種々の程度の絶対暗点または相対暗点を残す。
        • 陽性現象を伴わない暗点が生じる場合もある。
        • 陽性現象を伴わない暗点はしばしば急性発症するが、徐々に拡大するのが通例である。
      • 次いで頻度が高いのは感覚障害で、チクチク感として現れ、発生部位から身体および顔面の領域にさまざまな広がりをもって波及する。
        • 最初から感覚鈍麻が生じる場合があり、感覚鈍麻が唯一の症状の場合もある。
      • さらに頻度は低いが、言語障害が現れる。失語性のものが通例であるが、分類困難である場合が多い。
      • 前兆に運動麻痺(脱力)が含まれる場合には、1.2.4「家族性片麻痺性片頭痛」または1.2.5「孤発性片麻痺性片頭痛」としてコード化する。
      • 前兆症状は連続して出現することが多く、視覚症状で始まり、続いて感覚症状、失語性言語障害を生じる。
        • この順序が逆転したり入れ替わったりする例も記載されている。
  • 1.2.2 典型的前兆に非片頭痛様の頭痛を伴うもの
    • 解説:
      • 視覚症状、感覚症状あるいは言語症状のいずれか1つ以上からなる典型的前兆がある。
      • 前兆が、1.1「前兆のない片頭痛」の基準を満たさない頭痛を伴って発現するもの。
    • 診断基準:略
  • 1.2.3 典型的前兆のみで頭痛を伴わないもの
    • 詳細略
    • 1.2.1「片頭痛を伴う典型的前兆」を有する患者が加齢とともに、頭痛が全く起こらなくなったりすることがある。
    • 一部の患者(主に男性)では、初発から1.2.3「頭痛を伴わない典型的前兆」を認めることがある。
    • 前兆が40歳以降に初発し、陰性徴候(半盲など)が主たる症状の場合、あるいは前兆が長時間にわたり遷延する場合や、きわめて短時間である場合には、
      その他の原因の除外が必要である。
  • 1.2.4 家族性片麻痺性片頭痛
    • 解説:
      • 運動麻痺(脱力)を含む前兆のある片頭痛で、第1度近親者または第2度近親者の少なくとも1人が運動麻痺(脱力)を含む片頭痛前兆を有する。
      • 診断基準:略
      • 1.2.4「家族性片麻痺性片頭痛」の特定の遺伝的サブタイプが同定された。
        FHM1では第19染色体上のCACNA1A遺伝子の変異があり、FHM2では第1染色体上のATP1A2遺伝子の変異が知られている。
      • 旧頭痛大学(2006)の解説より
        • channelopahy(チャネル病)の可能性あり
        • チャネル病とは、イオンチャネル蛋白の変異、チャネルに対する抗体などに原因を持つ疾患の総称である。
        • 悪性過高熱、周期性四肢麻痺などがある。
        • FMHは常染色体優性遺伝を示す。
        • 小脳萎縮を伴う家系がある。
        • 19染色体上のP/Q-type Ca++ channel α1-subunit(CACNL1A4)遺伝子異常による疾患(allelic disorder)
        • 発作性運動失調症、spinocerebellar ataxia type6(SCA6)も同類項。
        • 脳血管撮影は禁忌(血管攣縮をきたしやすい)
        • スマトリプタンも禁忌
        • ワソランによる治療。Lastimosa AC, et al.  Neurology 2003 61: 721-722.
        • ⇒片頭痛の分子生物学
  • 1.2.5 孤発性片麻痺性片頭痛
    • 解説:
      • 運動麻痺(脱力)を含む前兆のある片頭痛で、第1度近親者または第2度近親者に運動麻痺(脱力)を含む片頭痛の前兆を有するものがいない。
  • 1.2.6 脳底型片頭痛
    • 以前に使用された用語:脳底動脈片頭痛(Basilar artery migraine)、脳底片頭痛(basilar migraine)
    • 解説:
      • 片頭痛の前兆の責任病巣が、脳幹 または 両側大脳半球(あるいはその両方)と考えられるもの。
      • 運動麻痺(脱力)が前兆である場合は含まない。
    • 診断基準:
      • A. B-Dを満たす頭痛発作が2回以上ある
      • B. 少なくとも以下の2つの完全可逆性の前兆があるが、運動麻痺(脱力)はともなわない
        • 1. 構音障害
        • 2. 回転性めまい
        • 3. 耳鳴
        • 4. 難聴
        • 5. 複視
        • 6. 両眼の耳側および鼻側の両側にわたる視覚症状
        • 7.
          不安のための科学explanantion
          運動失調
        • 8. 意識レベル低下
        • 9. 両側性の感覚障害
      • C. 少なくとも以下の2項目を満たす
        • 1. 少なくとも1つの前兆は5分以上かけて徐々に進展するか、および・または 異なる複数の前兆が引き続き5分以上かけて進展する
        • 2. それぞれの前兆の持続時間は5分以上60分以内
      • D. 1.1「前兆のない片頭痛」のB-Dを満たす頭痛が、前兆の出現中もしくは前兆後60分以内に生じる
      • E. その他の疾患によらない  (注1)
    • コメント:
      • 脳底型発作は若年成人に最も多い。
      • 脳底型発作を有する患者は、典型的前兆のある発作も経験していることが多い(両方の片頭痛についてそれぞれコード化する)。
      • 運動麻痺(脱力)がある場合には、1.2.4「家族性片麻痺性片頭痛」または1.2.5「孤発性片麻痺性片頭痛」としてコード化する。
      • 1.2.4「家族性片麻痺性片頭痛」を有する患者の60%に脳底型症状が認められる。
      • したがって、運動麻痺(脱力)が生じない場合に限って1.2.6「脳底型片頭痛」と診断する。
      • 診断基準Bに列記した症状の多くは、不安や過換気により生じる場合があり、誤った解釈がなされやすい。
      • 元来「脳底動脈片頭痛」または「脳底片頭痛」という用語が使用されていたが、
        脳底動脈領域の関与が不明確であるため(すなわち、左右両半球性におこった障害の可能性もある)、
        「脳底型片頭痛」という用語が選択された。
      • 旧頭痛大学(2006)の解説より
        • むかしは脳底動脈型片頭痛 (basilar artery migraine)といった
        • 脳底動脈に起源するか未確定のために「脳底型片頭痛」というようになった
        • 別名、Bickerstaff's migraine, syncopal migraine
        • 脳幹、両側後頭葉に症候の起源を有する頭痛。LANG
        • 前駆症状としてめまい、耳鳴、構音障害、運動失調、視野異常
        • 時には意識障害を閃輝暗点loss of vision followed by flashes of light、錯乱
        • 意識障害は失神、昏迷、昏睡、一過性全健忘などさまざま。
        • 脳底型片頭痛は「意識障害を伴う片頭痛」ともいえる。
        • 見ているものが大きくなったり、小さくなったりする「不思議の国のアリス症候群」がみられる。
        • 片頭痛発作はoccipitalgiaが特徴(かならず両側性)
        • 10歳台の女性adolescent girlsに多い。
        • やがて典型片頭痛に移行する。
        • 四肢・口囲のしびれ、浮遊感、平衡障害、言語不明瞭、昏迷(片頭痛性昏迷migraine stupor)、
          霧視が現れ酩酊状態と紛らわしい。
        • アルコ―ル中毒患者や薬物中毒患者と誤診される。
        • 不安、過呼吸症候群が合併した片頭痛と紛らわしい。
        • 山根清美ら:basilar migraineと意識障害日本頭痛学会誌25(1),1997:127
          basilar migraineには失神、昏迷、昏睡、一過性全健忘を伴う
        • 文献: 山根清美ほか. 不思議の国のアリス症候群を呈した片頭痛(basilar migraine)の2症例. 日本頭痛学会誌 2001;28:22-24
        • 脳底動脈片頭痛の前兆として小型動物や小人が幻覚(Lilliputian hallucinations)として現れることがある
          Hallucinatory miniature figures may appear during migraine
          (Cephalalgia 2001;21:990-992.)
        • 「リリパット」はガリバー旅行記の小人国です。小人幻覚はpeduncular hallucinosisの特徴で椎骨脳底動脈循環不全の症候である。
      • 2006/09/24以降の文献
        • 脳底型片頭痛に類似した髄芽腫_Cannas A, et al.: Medulloblastoma induces unusual headache with clinical picture of basilar-type migraine complicated by ischaemic infarcts. Cephalalgia 26:1238-41, 2006
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● 1.3 小児周期性症候群(片頭痛に移行することが多いもの)

● 1.4 網膜片頭痛retinal migraine

  • 診断基準⇒日本頭痛学会のHP参照
  • 網膜片頭痛  旧頭痛大学(2006)の解説より
    • 網膜に分布する血管が収縮する。
    • 一側性の視力障害(分のオーダー)→眼の奥の疼痛・頭痛
    • amaurosis fugaxと類似する。
    • (以下はウインナー、ポールら小児の頭痛より)
    • ocular、ophthalmic、alltedor visual pathway migraineなどとよばれる。
    • 通常若年成人にみられる。
    • 一過性黒内障はカーテンが下がるような発症をする。
    • 網膜片頭痛は頭痛の前、後、最中に視力障害をきたす。
    • 短時間(60分以内)で突然の単眼の眼前暗黒や視野が灰色やまぶしい状態になる。
    • 視覚障害と頭痛との間隔は60分くらいである。
    • 眼筋麻痺性片頭痛と同様に、痛みはしばしば後眼窩に出現し、同側の視覚障害が起きる。
    • 発作中の眼底検査では、網膜静脈、動脈の収縮と網膜の蒼白が認められる。
    • 患者によっては、網膜梗塞のため、著明な続発性視力障害(暗点、高度の視力障害、一側盲)などが残る。
    • Mayらはラットを用いて、三叉神経節の刺激を行い、網膜と硬膜で無歯性神経性炎症をきたすことを示した。
    • 人では証明できなかった。
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● 1.5 片頭痛の合併症

● 1.
6 片頭痛の疑い

  • 他疾患にコード化する: その他の疾患に続発する片頭痛様頭痛(症候性片頭痛)は、該当疾患に応じてコード化する。

  • 解説:

  • 上記にコード化した疾患の診断に必要な基準項目のうち、1項目を欠いた場合に適用する。

  • 1.6.1 前兆のない片頭痛の疑い

  • 1.6.2 前兆のある片頭痛の疑い

  • 1.6.5 慢性片頭痛の疑い

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●増悪因子と誘発因子

  • 増悪因子(Aggravating factors)
    • よく知られている増悪因子は、心理的社会的ストレス、アルコール飲料の頻繁な摂取や、その他の環境要因など。
  • 誘発因子(Trigger factors, precipitating factors)
    • いくつかの誘発因子については、疫学調査(月経など)や臨床試験(チョコレート、アスパルテームなど)により、よく検討されている。
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●13.17 眼筋麻痺性片頭痛(ophthalmoplegic migraine)

  • 国際頭痛分類第2版では1.片頭痛群からはずされて第13群頭部神経痛および中枢性顔面痛に移された。
  • 13.17 眼筋麻痺性片頭痛
    • 解説:
      • 1本以上の眼球脳神経(一般的には第3神経)の不全麻痺を伴う片頭痛の特徴を有した再発性頭痛発作であり、
        MRI上の罹患神経の変化以外にはいかなる頭蓋内病変も認められない。
    • 診断基準:
      • A. Bを満たす発作が2回以上ある
      • B. 片頭痛様頭痛は第3、第4 または 第6脳神経のうち1本以上の不全麻痺を伴うか、または片頭痛様頭痛発現後4日以内に不全麻痺を生じる
      • C. 適切な検査により傍トルコ鞍、眼窩裂および後頭蓋窩の病変を否定できる
    • コメント:
      • 頭痛はしばしば1週間以上持続し、かつ頭痛発現から眼筋麻痺発現までに最大4日の潜伏期間が存在するため、
        13.17「眼筋麻痺性片頭痛」が片頭痛の異型であるとは考えられない。
      • MRIで罹患脳神経の槽部にガドリニウム取込みが認められる場合もあることから、
        眼筋麻痺性片頭痛は再発性脱髄性神経障害である可能性が示唆される。
         
  • 旧頭痛大学(2006)の解説より
    • 片頭痛とともに眼筋麻痺のくる片頭痛である(先行ではない!)。
    • 動眼神経に好発
    • 麻痺は数日続く
    • 脳動脈瘤やトロザ・ハント症候群などの基礎疾患を慎重に除外すべきである。
    • 文献
    • 眼筋麻痺性片頭痛例:MRIで槽内動眼神経の肥厚・増強が見られた。一名の小児例では三種混合ワクチン投与の10日目に起こった。このことから眼筋麻痺性片頭痛は再発性脱随性ニューロパチーとの関連性が推測された。眼筋麻痺性片頭痛:再発性脱随性ニューロパチー?⇒ Cophalalgia/Headache日本語抄訳版 2(1):12-16, 2002/Lance JW, Zagami AZ. Ophthalmoplegic migraine: a recurrent demyelinating neuropathy? Cephalalgia 2001;21:84-89.
    • 眼筋麻痺性片頭痛⇒ Ishikawa H, Yoshihara M, Mizuki K, Kashima Y, [A pediatric case of ophthalmoplegic migraine with recurrent oculomotor nerve palsy], Nippon Ganka Gakkai Zasshi 104: 3, 179-82, Mar, 2000.
    • 内眼筋麻痺を伴う動眼神経麻痺と内眼筋単独麻痺を繰り返した眼筋麻痺性片頭痛の4歳女児例を報告する.マレイン酸チモロール点眼で発作は軽減した⇒石川弘、吉原睦、水木健二、加島陽二:眼神経麻痺を繰り返した眼筋麻痺性片頭痛の小児例 .日本眼科学会雑誌 2000;104:179-182
    • デンマークでの片麻痺性片頭痛の疫学統計⇒L Lykke Thomsen et al. 361 An epidemiological survey of hemiplegic migraine. Cephalalgia 2002;22:361-375
    • 反復性外転神経麻痺を伴った眼筋麻痺性片頭痛の女性例⇒Headache: 2003; 43(7):798 Onset of Ophthalmoplegic Migraine With Abducens Palsy at Middle Age? Wim I. M. Verhagen, et al.
    • 眼筋麻痺性片頭痛
    • 眼筋麻痺性片頭痛:未解決の問題
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